りせの本棚。

「雨はコーラをのめない」/ 江國香織

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はじめに

 「はじめて雨に会った日のことは、忘れられない。凍えそうに寒い、十二月の、雨の日だった。濃い栗色の巻き毛をした雨は、オスのアメリカン・コッカスパニエル。私たちは、よく一緒に音楽を聴いて、二人だけのみちたりた時間を過ごす。もちろん、散歩にも行くし、玩具で遊んだりもするけど。甘えたがりの愛犬との特別な日常や、過去の記憶を呼び覚ます音楽について、冴え冴えと綴った好エッセイ集。」

文庫裏表紙より

印象に残った部分

記憶と、そのときには全く知らなかった現在の自分とのギャップを、私はたのしいと思う。時間がたつのはすてきなことだ。たとえばかつては存在しなかった雨が、いまは存在する。

P45

江國さんの人生に対するスタンスがとても好きで、私は彼女のエッセイをいつも読みたくなるのかもしれない。

江國さんの文章を読んでいると、人生がすごく善いものに思えてくる。そんな不思議な力を持っていると思う。

「時間がたつのはすてきなこと」と書かれているのを読むと、わぁ、本当にそうなのかも、とうれしくなる。

自分がなにかと考えすぎて、不安を抱えやすい性格だからこそ、安心して「今」を重ねていこう、と前向きな気持ちで思えるのだ。

「もう秋だね」

 私の言葉に、雨はしっぽを激しくふって応える。でもそれは、梨がおいしくてふっているのだ。秋生まれの雨は、自分が秋に生れたことを知らない。

 スザンヌ・ヴェガは、淋しい温度で歌っている。

「この温度がね、いいでしょ」

 私は雨に言う。そして、雨の知らない時代の、知らない場所の、なつかしい出来事をいくつか思いだす。

 かつて一年間だけ働いていた書店で、雨の日はお客さんがすくなくて、カウンターの内側にすわって本を読んでいてもよかったこと、ガラスごしにおもての通りが濡れるのをみていたこと、奥の事務所が書店の匂いではなく図書館の匂いだったこと、おなじ場所で働いていた年上の女の人たちのこと。

 あるいはまた、いろんな国の人たちと一緒に受けた英語の授業のこと、ひと気のないホールのベンディング・マシンがたてるけたたましい音や、住んでいた家の裏庭の芝生、一人で街にでても、所在なくてすぐにデリやカフェに入ってしまったこと。

 スザンヌ・ヴェガは、私にそのようなことを思いださせる。自分が「男性」にも「家族」にも「職業」にも属していないと感じていたころの自意識を思いだすのだ。

P46~47

おわりに

江國香織さんの、愛犬との日々を綴ったエッセイです。犬が好きな方、音楽好きな方、それ以外の方にもおすすめの一冊🐕💓

りせ。

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